比婆山 散り残るころ

2025年11月13日

中国山地。標高1,200mほどのなだらかな山容は、太古に侵食によって平坦化された地形(準平原)がその後の地殻変動で隆起してできたと考えられています。比婆山(ひばやま)は「古事記」に登場する伊邪那美命(イザナミ)の御陵に比定されるかつての信仰の山。地形と歴史が育んだ山頂付近のブナ林を目当てに訪れました。

庄原の森や社叢をめぐる旅の1日。


比婆山

朝7時半、県民の森の登山口。標高800m。ミズナラがお出迎え。

紅葉の見ごろは過ぎたせいか、意外と人が少なく静かでした。

とはいえ木々の色づきはまだ見られました。しばらくは二次林の林相。

林床は深いチマキザサ。

ミズナラ。

クリ。

コブシ、ホオノキ。

カスミザクラ。

ウワミズザクラ、カマツカ。

ハルニレ、ケヤマハンノキ。

ミズメ。

ミズキ。

クマノミズキ。

ヤマボウシ。

アオハダ、コシアブラ。

ナラ枯。それほど目立ちませんでしたが、部分的に。

落葉を踏みしめてゆっくりと登り道。全行程で出会った登山者は2組3名だけでした。

アカシデ。

サワシバ、クマシデ。

イタヤカエデ。

ヤマモミジ。

コハウチワカエデ。

ハウチワカエデ。

ミヤマハハソ。

ヤマグワ。

ヤシャブシ。

ツノハシバミ。

ヤマウルシ、ウツギ。

ハクウンボク。

アセビ。

ハイイヌガヤ。

1時間弱で標高970mの出雲峠。あと少しで島根県境。

周囲は人工林でした。 

カシワの孤立木がありました。

こちらはズミ?

峠から南西に延びる県境の尾根道に入ります。

ブナの大径木が目立つようになりました。

次第に標高を上げていきます。

三角点のある烏帽子山(1,225m)に到着。一つの独立峰というより複数の峰からなる比婆山の頂のひとつ。

今日唯一の眺望が得られました。正面はこれから向かう「御陵」 。東側は遠く道後山方面。

山頂付近にアカマツ。

ウスノキ。

ナツハゼ、ダイセンミツバツツジ。

ソヨゴ。

ハイイヌツゲ。

ツルリンドウ。

落葉して明るい登山道。

鞍部から登り返していくと巨石がありました。このあたりがイザナミの陵墓と伝えられています。「古事記」の記述には「出雲国と伯伎国との堺の比婆之山に葬りき」とあるだけで複数の比定地があるようですが、この地は古くから信仰の対象になっていたそうです。

「比婆」の語源は、「霊庭(ひば)」(神霊を祀る場所)との説があるものの定かではない模様。 樹木名の「ヒバ」(ヒノキアスナロ)よりもはるかに語史が古く、語源の関係はないようです。この地域に分布していそうなアスナロにも今回出会いませんでした。

平坦な「御陵」の山頂に到着。森に囲まれて静かです。ここまで2時間強。

周辺はイチイが混交するのが特徴的。

大径木もありました。

イチイの群落は中国山地を含む西日本では珍しい存在。御陵周辺、標高1,200m以上の尾根部に集中しており、胸高周囲1m以上の個体が100本程度あるとの記録も。 御陵の歴史を考えると、人為起源の分布の可能性もあるでしょうか。。

スギ。

林床は深いチマキザサ。最深積雪は1から1.5mほどと見積もられます。

稜線を進めばこの山域の最高標高点がある立烏帽子山(1,299m)があるのですが、「ブナ林」の表示がある下山コースを選択。

このあたり約90ヘクタールは国の天然記念物。 御陵の山域が神聖視されていたことで、たたら製鉄など周辺で森林利用が盛んだったにもかかわらず、まとまったブナ老齢林が残ったとみることができます。

日本海型・太平洋型双方の植物要素がみられるすばらしいブナ林。

ホオノキ。

アズキナシ。

ナナカマド。

ミズナラ。

ウリハダカエデ。

コミネカエデ。

ブナの林冠木はほぼ落葉していたのですが、下層・低木は意外にも目にまぶしい色づきを残していました。

ハイイヌガヤ。

ツルシキミ。

タムシバ。

クロモジ。

フウリンウメモドキ。

ミヤマガマズミ。

オオカメノキ、タニウツギ。

リョウブ。

コマユミ。

タンナサワフタギ。

低木層にかなり多く見られ、西日本のブナ林を感じさせる存在でした。

ヤマアジサイ、コアジサイ。

ヤマブドウ。

気持ちのよい径を下ります。 標高1,100mあたりで目だって木のサイズが小さくなりました。このあたりまではかつての薪炭利用があったのかもしれません。 

ミズナラが目立って増えました。

さらに下ると、スギ人工林。

歩き始めてから4時間弱、11時半に下山。

鉄穴流しの遺構がありました。

スギに囲まれた金屋子神社も。 

登山口付近の地名は「六の原」。かつて製鉄の森林利用の影響で草原も多かったのかもしれません。その名残をとどめる周囲の山々を見上げました。


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西城町

下山後、何か所か回りました。南側から比婆山方面が見えました。

「ヒバゴン」(1970年代に話題になった)出没地の看板

熊野・熊野神社

さきほど訪れた比婆山御陵をご神体とする遥拝の場であった熊野神社。イチョウ が色づいていました。そして「老杉群」の看板。

見事なスギ。胸高周囲4m以上のものが60本以上あるとのこと。

最大の木の直径は実に2.5m。看板によると 「天狗の休み木」と呼ばれ、「夏の夜、時折この境内に天狗の使う団扇の音が聞こえた」「杉の枝葉を自宅に持ち帰って焚けば腹痛を起こす」「枝の上側の樹皮が滑らかにすれており、これは比婆大神(伊邪那美命)の使いである天狗の仕業」。

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小さな集落の奥。標高700mの渓畔。

「熊野の大トチ」と呼ばれるトチノキの大径木。

根元から2本に分かれた樹形。合わせた根回り周囲は12.2m、樹高は30mと中国地方では最大級。樹洞は30人が入れる大きさ、だそう。

サワグルミ。

ケヤキ。

ミズメ。

イタヤカエデ。

メグスリノキ。

チドリノキ。

対岸からトチノキを振り返りました。風格があります。

集落からの眺め。

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三坂・北村神社

町域の東側は道後山麓。標高710mにある神社の巨樹群。 

トチノキ、イチイ。それぞれ胸高直径1.3、1.4m。 

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終わりかけとはいえ、滋味深い木々の色づきをたのしむ山旅でした。

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